コラム

僕的起業論 6

僕的起業論 6

経営はアートだと言われる。
つまり、経営者はアーティストだというわけだ。
僕もそのとおりだと思う。
僕の拙くて短い、経営経験(とやら)を振り返っても、経営という能力は、
科学や論理というよりも、経営者の感覚や知見が成果に結びつくという意味で、
アートに近しいのではないかと考える。

もっと言えば、この成熟した時代に起業するなんて、自己実現以外の何物でもない。
そういう意味でもアートに近いということだ。

戦後の食えない時代ならいざ知らず、今更自分で会社を興したいなんて、
単なる金儲け、社会貢献だけではなく、自己実現・自己表現の意志がなきゃやりゃしないでしょう。
なんとも、業の深いことだ。

自己実現のために起業ですって。
もう、キャーッ!!である。

社会貢献とか新しい時代へ、大河ドラマ見て熱く語るのはいいが、
そりゃもう、己の生き様をこの世界に残していきたい、というそれはもう、
熱くも悲しい自我の世界なのだ。
もう恥ずかしいったらありゃしない。
まあ、自分で勝手に言い切って恥ずかしがっていれば世話はないが、僕は思うのだ。

OK、自己表現であることは認めよう、であれば少なくとも表現者が持つべき謙虚さを、
現代の起業家は持つべきではないかって。

そう、旅で出会ったアーティストは恐ろしいくらいに皆、ストイックで謙虚でした。

「イラストレーターは、イラストを描くことが仕事なの。
アーティストって、何をするのが仕事だと思う?
難しいでしょ?w
だから、私に仕事をしてっていうオーダー、その1回1回が奇跡なの」

彼女は、香港のドミトリーの入り口一面に作品を描いてくれって宿の主人に依頼されたあと、
今日一泊分の宿泊費でねって交渉し、そう僕に言ったのでした。
彼女は徹夜で絵を描いて、そのまま早朝の便で旅立っていきました。
残されたのは、青空と雲の下で女の子がダンスしている絵でした。

僕は、彼女や彼らみたいな才能はないけれど、
こんなステップで人生をダンスしたいと強く思ったのでした。

「ストレイトストーリー」という映画があります。
デヴィッド・リンチが監督をした、爺さんが病気で倒れたお兄さんに会うために、
時速数キロの遅いトラクターにのって何百キロと離れた街まで旅を続ける、
というロードムービーです。
その中で、色々な人が爺さんをもっと早く到着できるように
手伝ってあげようとするのですが、爺さんは

「自分で行くことに決めたんだ」

と、そのままトラクターに乗っていきます。

この映画を観た時まだ二十代だった僕はこの言葉に衝撃を受けたのでした。

僕は、この数年間のイエルネットから続く、僕の転職を思い出しました。
旅で出会った多くのアーティストを思いました。
IMJで出会った、仲間と戦友のことを考えました。

そして、いくつかの試みに挫折したある夜に、自分でやろうと決めたのでした。

深夜三時でした。

(続く)

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